「 年別アーカイブ:2020年 」 一覧

カーテン

かさなる白いモラトリアムサマー 15話

作:武田まな 暗闇の中で目覚まし時計の針だけが青白く光っていた。針は八時丁度を指していた。帰宅してからもうかれこれ一時間以上、経過したことになる。その間、私は膝を抱え丸くなり微動だにしなかった。どうか …

椅子

かさなる白いモラトリアムサマー 14話(3/3)

作:武田まな  森野カオルは頬杖をして眠りこけていた。 彼の様子に気が付いたエマ先輩は、ずり落ちる寸前の彼のメガネを外すと、机の上に置いた。窓から差し込む夕日がレンズをすり抜け屈折し机の上に赤を投影さ …

アイスティー

かさなる白いモラトリアムサマー 14話(2/3)

作:武田まな 翌日、里実ワカバは朝顔模様のうちわ(軽井沢で手に入れたデザインも値段も上品なうちわ)で日焼けした肌に風を送りながら、森野カオルの腕時計に目をやっていた。 それにしても、今日は静かだ(ちと …

木

かさなる白いモラトリアムサマー 14話(1/3)

作:武田まな  夏休みという催しが世の中にあますとこなく行き渡った時分、里実ワカバと友人のエミカは、かねてから企てていた旅行へと出かけた。その行き先は、日本でも指折りのサマーリゾート、軽井沢。そして、 …

太陽

かさなる白いモラトリアムサマー 13話(3/3)

作:武田まな  エマ先輩からの提案で、ランチは図書館の飲食スペースで食べることになった。というのも、トートバッグの中から現れたのが、クロワッサンサンドと、アイスコーヒーと、レモンだったからである。森野 …

文房具

かさなる白いモラトリアムサマー 13話(2/3)

作:武田まな  やっぱり、あの日から自動ドアが反応しない。並列化した時間と距離を置いたことと関係があるのだろうか、と二人は問い合った。しかし、それ以上、思索にふけることはせず「ま、いっか」とベールに包 …

砂時計

かさなる白いモラトリアムサマー 13話(1/3)

作:武田まな  とうに待ち合わせの時間を過ぎているではないか。不機嫌極まりない事態である。断っておくが世の中の並列化した時間のことならば、さしもの私とてある程度は寛容でいられる。というのも、今、私の言 …

缶コーヒー

かさなる白いモラトリアムサマー 12話(4/4)

作:武田まな 作業は難航した。その様子を物語るかのように、机の上には消しゴムのカスの山が築き上げられた。 山を築き上げた二人は、今、頬杖をして宙を見据えていた。早い話、行き詰ったのだ。 「少し休憩する …

ティラミス

かさなる白いモラトリアムサマー 12話(3/4)

作:武田まな  今朝、講義がはじまる前、森野カオルは蔵木ミカを見つけると地形図づくりの協力を仰いだ。 彼女は「ティラミスをおごってくれるのなら」と二つ返事で承諾した。 スケッチを観賞し終えると、蔵木ミ …

本

かさなる白いモラトリアムサマー 12話(2/4)

作:武田まな 森野カオルが図書室に到着すると、蔵木ミカは本を返却しているところだった。姿勢が良いものだから、本を返却するというごく日常的な動作すら、彼の目に可憐に映ったりする。 「あ、森野先輩。その顔 …

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