「 月別アーカイブ:2020年06月 」 一覧

本

かさなる白いモラトリアムサマー 12話(2/4)

作:武田まな 森野カオルが図書室に到着すると、蔵木ミカは本を返却しているところだった。姿勢が良いものだから、本を返却するというごく日常的な動作すら、彼の目に可憐に映ったりする。 「あ、森野先輩。その顔 …

木陰

かさなる白いモラトリアムサマー 12話(1/4)

作:武田まな 大学の近所にあるベーカリーショップでクロワッサンを買うと、森野カオルはいつものベンチに向かった。 森野カオルが目指すいつものベンチには、高橋とエミカが腰掛けていた。そんな二人の目前で、里 …

光

かさなる白いモラトリアムサマー 11話(5/5)

作:武田まな  里実ワカバはポージングを続けながら思った。  今までの私は、大胆になるきっかけを外部からの偶発的な要因に求めていた。今夜のように自らの手でその要因なるものを作ろうとはしなかった。ただた …

紅茶

かさなる白いモラトリアムサマー 11話(4/5)

作:武田まな  テーブルに並べられた紅茶は、ストレートティーだった。何故だろう? と森野カオル。  そして二人は、紅茶に息を吹きかけると口に運んだ。  夏の暑い夜に紅茶なんぞいただけば、汗ばむのは当然 …

歩道橋

かさなる白いモラトリアムサマー 11話(3/5)

作:武田まな 電車は里実ワカバのアパートメントのある最寄り駅に到着した。 改札を出た里実ワカバと森野カオルは、しっぽりと歩いていた。そんな二人の会話はシンプルなものだった。まるで深夜に行うシリトリとい …

布

かさなる白いモラトリアムサマー 11話(2/5)

作:武田まな 「ねえ、ワカバ。大丈夫なの?」とエミカは、男たちが話し込んでいる隙に小さな声で尋ねた。それは昼間の鼻血のことである。また、飲むペースが速いことも含まれている。 「うん。もう平気よ。ほら」 …

電球

かさなる白いモラトリアムサマー 11話(1/5)

作:武田まな 〔現在〕 「おーい。森野、里実くん」 そう呼ばれた二人は、苦笑いを浮かべた(声がデカすぎる。いらぬ注目を浴びてしまったではないか)。 高橋は無人島からたまたま通りかかった船に向かって、救 …

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